「自分の作ったうつわを手にしてもらったとき、おさまりが良い、手触りが心地よいと言ってもらえればそれで十分。」と語る早良路窯・陶磁師の唐川さん。たとえば唐津のものなど、先人たちの手による陶磁器に、つい目がいってしまうそうです。庶民のために作られた大量生産の雑器にも独特の存在感を放つものがあるのだとか。ときには古い陶片を手にしながら、その土の質感や高台のかたち、残された手跡に、三百年も昔のつくり手たちに思いを馳せたりすることも。
酒器ならば見込みや佇まいを、食器ならば持ちやすさや実用性を重視する。
陶器は存在感や手触り、育てる楽しみ、磁器は透き通るような透明感を味わってもらいたい。
ー「有名な陶芸家になることよりも、気軽に窯に立ち寄ってもらい、たくさんの人たちに使ってもらいたい。」
日ごろの謙虚な物腰とは対称的に、唐川さんが生み出す作品は、静けさと力強さが融合する独自の世界観、長く愛されるものだけが持つ存在感を放っています。
親戚が携わっていた仕事をきっかけに陶芸の世界に興味を持ち、10代の頃には既にものづくりの仕事をしたいと考えていた唐川さん。佐賀・有田の地で培われた確かな技術、土や釉薬に対するあくなき探究心、それらを静かな情熱に変えて、ろくろに向かい、土と対話するように作品を作り上げたその顔には、誇らしげな表情と自信が感じられました。
(取材 KUREAI)